山で使うベースレイヤーの素材といえば、どんなものを思い浮かべるでしょうか。商品によっていろいろ特徴はありますが、素材としての種類は、大きく分けて3つ。速乾性に優れ汗処理能力の高い「化学繊維」、吸湿速乾性や防臭機能、UVカット効果などを備える天然素材の「ウール」、そして、その2つを組み合わせた「ハイブリッド」の3種類があります。
ところが、今回YAMAPがオリジナルで作ったベースレイヤーの素材は、その3つの分類のどれにも属しません。10年以上の年月をかけてようやく製品化にたどり着いた、まったく新しい素材を使用したベースレイヤーです。



















自然由来の素材が時代を変える、ナチュラルメイドのアクティブウェア
夢のエコ素材「ポリ乳酸」とは
YAMAPオリジナルのベースレイヤーの開発は、スタッフが「ポリ乳酸」という、耳なじみのないエコ素材についての情報を入手したことに始まります。
「ポリ乳酸」は、サトウキビなどに含まれる糖を原料とした、生分解性プラスチック。今から20年ほど前、植物由来であることから「環境にやさしい夢のプラスチック」として、世界中で大きな期待を集めました。しかし、多くの企業が実用化を目指すものの、耐熱性や成形性の悪さなどの弱点を克服する研究が進まず、残念ながらほとんど普及しなかったという歴史があります。
ところが、その後も「ポリ乳酸」の実用化の夢を追い続けてきた企業がありました。素材の研究開発を行なう日本の企業、Bioworks(バイオワークス)です。
吸湿速乾性や、撥水性、耐久性などの機能が重視されるアウトドアアパレルは、石油由来のプラスチックを原料とする合成繊維の存在なしには成り立たちません。しかし、製造時の水の大量消費や染料や撥水剤などの化学薬品の使用、マイクロファイバーの流出や廃棄時のCO2の発生など、合成繊維は環境負荷が大きいことも確か。各ブランドがさまざまな対策をとってはいますが、まだまだ先の見えない状態が続いています。
そこに危機感を覚えたバイオワークスが、10年以上の年月をかけて2021年に商品化に成功したのが、ポリ乳酸バイオプラスチックの「PlaX」。それまで課題とされてきた、耐熱性や成形性、染色性の悪さを、独自の添加剤(植物由来)を加えることで克服し、植物由来の再生繊維でありながら、合成繊維と同等の性能を確保する新素材が誕生したのです。
自然由来の再生繊維「PlaX」の利点と弱点
YAMAPが「PlaX」に興味をもったのは、ただ環境負荷が少ないからではなく、なによりも、山のアクティビティに必要な多くの機能を備えていることにほかなりません。
第一に、速乾性の高さ。ポリ乳酸自体は天然由来の繊維でありながら、水を吸わない疎水性の素材なので汗などの濡れをすばやく乾かす効果があります。また、ポリ乳酸には抗菌・消臭機能が備わっているため、気になる生乾きのニオイを原因である「モラクセラ菌」の繁殖を防ぐ効果が高く、洗濯や濡れ・乾きを繰り返しても、気になる匂いが出にくいことも大きなメリット。これらの機能性はポリ乳酸そのものによる効果であるため、着用年数が伸びても効果が変わらないこともポイントです。
さらに、ポリ乳酸は人の肌と同じ弱酸性なので、刺激が少なく敏感な肌にもやさしいのも特徴。化学繊維によくある静電気も起こりにくいという、うれしい性質も備えます。
ただ、開発されて間もない新しい素材だけに、繊維としてはまだまだ弱点もあります。まずは、摩擦によるピリングができやすいこと。そして、もともと生分解性の素材であるために石油由来の化学繊維に比べて熱や湿気に弱いこと。アイロンなどの高熱処理や、サウナのような多湿の環境には向きません。また、素材価格が高いことも、供給や流通の量が少ない現時点でのデメリットといえるでしょう。
PlaXの個性を生かし弱点を補う、「プラックスウール」の素材力
YAMAPが「PlaX」を使用した商品を作るにあたり、最初にしなければならなかったのが、これらのデメリットを克服すること。山で使えるアクティブウェアとしての機能を、どうやったら充分に備えられるかを考えることでした。
そこでとられたのが、「PlaX」に、「ウール」と「キュプラ」という2つの素材を組み合わせて、3素材で構成された生地にする方法です。
キュプラは、「コットンリンター」と呼ばれる、綿花の種子の表面に付いている産毛のような短い繊維を原料として作られる天然由来の再生繊維。高級衣類の裏地として多く使われ、肌触りや滑りが非常によいのが特徴です。
ウールは、抗菌・消臭効果を備え、天然のエアコンなどと呼ばれるように、吸水性や調湿性に優れる、アウトドアでも多用される素材。
この3つの天然由来の素材を組み合わせて、肌に触れる内側はPlaXとキュプラ、表面がウールという2重構造に編み上げました。こうすることで、3素材それぞれの特性が、互いのメリットを高め、デメリットを補って、アウトドアで使える機能を最大限に引き出すことを可能にします。
PlaXもキュプラも、繊維が非常に柔らかいため、肌触りがとてもなめらか。静電気が発生しづらいこともあり、化学繊維やウールのチクチク感が苦手な敏感肌の人も、快適に使うことができます。また、PlaXの特性である耐摩耗性の弱さも、内側にのみ素材を採用することでデメリットを克服しています。
体にかいた汗は、吸水・吸湿性に優れ、放湿性も備えるキュプラが吸い取って、水を全く吸わないPlaXに追い出されるように表面のウールに移動。濡れを内部にとどめることなく、すばやく乾かしてドライな状態に。
そして、とくに注目したいのが、プラックスウールの優れた防臭機能。PlaXとウールの共通点として、抗菌・防臭機能がありますが、ウールは人の汗などのアンモニアに、PlaXは生乾きのニオイの原因であるモラクセラ菌に対して、高い消臭効果を発揮するので、幅広いニオイに対応が可能。スタッフが120日間連続で洗濯せずに日常生活で着用しても、大量の発汗を伴う運動で、15日間断続的に、洗濯せずに繰り返し着用しても、不快感なく着用し続けることができたという実績もあります。
※120日連続着用はカットソーの下に1枚アンダーを着用。15日断続着用はカットソー単独着用(ヤマップ調べ)
素材力が引き立つシンプルなデザイン
デザインはごくスタンダードなロンTスタイル。程よいあきの首回り、ベーシックな袖口や裾の処理もシンプルな仕上がりですが、レイヤリングをじゃまする要素は何一つありません。カラーもアースカラーを基調にしたベーシックで使いやすいラインナップ。
2重構造のため、ふつうのロンTに比べて少し重さやボリュームがありますが、着てしまえばまったく気にならないレベル。軽量化が必須の長期縦走の着替えとして、持って歩くには向かないかもしれませんが、ほどよい厚みと落ち感のある独特の雰囲気は、ベースレイヤーとしてレイヤリングに組み込むのはもちろん、1枚で素肌に着て、肌触りのよさを満喫するのもおすすめです。
洗濯機で洗えるウォッシャブル仕様ですが、ピリングを避けるために洗濯ネットを使うのがおすすめ。熱には強くないので、アイロンがけやタンブラー乾燥は避け、脱水後は形を整えてすぐに干してください。
世の中にはさまざまな優れた機能を備えたベースレイヤーが数多く存在しており、既存の素材だけでも、充分快適に過ごせていたかもしれません。好きなことを長く続けていくには、お財布に負担のない選択をすることも、フィールドでの安全性や快適性を守ることと、同じくらい大切です。けれども、少し先の未来やはるか遠くの海のことを頭に浮かべたとき、評判も実績も未知数の新素材を選ぶことは、夢をもって世界に飛び出す若者を応援するような、前向きで楽しい気持ちにさせてくれます。
サトウキビから生まれたPlaX、コットンがベースのキュプラ、羊の毛からできるウール。自然の素材から作られた繊維は、いつか分解されて自然に戻っていきます。素材の性質上、何十年も使い続けることはできませんが、それまでの時間を一緒に過ごす価値は、充分にあると思います。
数年後、PlaXはベースレイヤーの素材として、アウトドア界のスタンダードになっているかもしれません。その頃には流通量も増えて、価格も今より大幅に安くなっているでしょう。地球にやさしく、快適に使えて、使うことに意味のある1枚のTシャツ。何十年も眠っていた夢の技術が進化した姿でよみがえり、次の時代への扉を開ける瞬間を、この1着を手に入れて身につけることで、一緒に見届けてください。
サイズ表
S | M | L | XL | |
着丈(cm) |
64.5 |
67.5 |
70.5 |
73 |
肩巾(cm) |
46 |
48 |
50 |
52 |
バスト(cm) |
51 |
53 |
55 |
57 |
裾巾(cm) |
49 |
51 |
53 |
55 |
袖丈(cm) |
58.5 |
60 |
61.5 |
63 |
袖巾(cm) |
19 |
20 |
21 |
22 |
袖口(cm) |
10.5 |
11 |
11.5 |
12 |
天巾(cm) |
19.5 |
20 |
20.5 |
21 |
前下がり(cm) |
10.5 |
11 |
11.5 |
12 |
後ろ下がり(cm) |
2.5 |
2.5 |
2.5 |
2.5 |
衿巾(cm) |
1.7 |
1.7 |
1.7 |
1.7 |
サイズの選び方(メンズ)
日本で企画し、日本で生産しているので、日本人の標準体型に合わせたフィッティングで作られています。日本人男性の標準体型(172cm 65kg想定)の方がMサイズを着用するとジャストサイズで着れるサイジングになっています。普段お洋服を選ぶ時のサイズ感をベースに、ゆったり着たい場合はサイズUPするなどお好みのサイズをお選びください。
174cm Mサイズ着用
普段トップスはMサイズを着用しています。この製品はMサイズがジャストサイズです。
178cm Lサイズ着用
普段トップスはLサイズを着用しています。この製品はLサイズがジャストサイズです。
商品詳細
ブランド |
YAMAP(ヤマップ) |
名称 |
プラックスウールロングスリーブT/MENS |
素材 |
ウール 54% ポリ乳酸 23% キュプラ 23% |
重量 |
約280g(Mサイズ) |
サイズ |
S、M、L、XL |
カラー |
Black(ブラック) |
備考 |
・濃色製品は使用中の摩擦や濡れた状態での接触により色移りする事があります。洗濯の際は他のものと分けて洗ってください。 |