本体は、軽量なリサイクルナイロンを使用しています。繊維そのものも非常に強靭で、リップストップ仕様となっているので引き裂きや擦れにも強くなっています。耐水性にも優れていて濡れにくく、たとえ濡れてもすぐに乾く速乾性も兼ね備えています。縫い目には防水加工などは施されていませんが、逆に、水抜けがよく、中に水が溜まることもありません。

大きさを表すリッター数は１リットルと、数値上は非常に小さく思えますが、使ってみると、その大きさに不便はあまり感じません。メインコンパートメントには財布や地図、スマートフォンやパワーバーなども十分に収納が可能。その使い勝手のよさに、１リットルというカタログの数値を忘れてしまうほどです。

外側のポケットも、鍵や小銭を入れたりと、何かと便利です。メインコンパートメントとは気室が分かれているので、必要なものを探してかき混ぜて、中のものをぐしゃぐしゃにしまう、という心配もなく、素早くスマートに、必要なものへアクセスできます。

１リットルと小さなヒップパックですが、体に当たる部分にはパットが入っています。たとえ小さくても、鍵など鋭いものの角が肌に当たってしまうと、変に気になってしまうもの。そんな、些細ではあるけれども違和感を覚えてしまうような小さなストレスを取り除いて、しっかりとアウトドアアクティビティーに専念できるようにする。細やかな配慮が光る、アウトドアのことを熟知したメーカーならではの作りとなっています。

ヒップパックを体に固定するストラップは、柔らかいヘリンボーンウェビングベルトを使用しています。しなやかで締めやすく、適度な長さがあるので、ウェストに付けても、肩から斜め掛けにしても快適に装着でき、パックパックを背負った時でも違和感を覚えることはあまりありません。余ったベルトをまとめるゴムループがあり、だらりと垂れ下がったベルトが木の枝や岩に引っかかるというトラブルも防止できます。

メインコンパートメントとポケットの開口部にあるジッパータブには、ロープが付けられていて、グローブをしていてもストレスなく開け閉めが可能です。そのジッパータブを締めた時に収まるジッパーのエンド部分にはタブの頭が隠れるようにカバーが付けられています。タブの頭が何かに引っかかるというトラブルを回避し、冷えたタブが素肌に触れて「ヒヤッ」としたり、雪がこびりついてジッパーが固まってしまうことも防いでくれる、小さくも有効な仕掛けです。

体に当たるパッド面の上部に、ベルトで作られたループがあります。小さなループですが、体からヒップパックを取った時に無くさないように壁にかけたり、カラビナやキーホルダーを利用してバックパックにつなげたり、洗濯した後の乾燥時にハンガーやフックにぶら下げたりと、何かと便利なんです。

本体をポケットに入れて、ポケッタブル状態にした時に、小さなループとフックが現れます。とてもコンパクトになるヒップパックゆえに、バックパックに入れた時にどこかに紛れてしまい、いざ使う時に見つからず、結局、バックパックの中身を全部出して探す…という手間をなくすために、このループは重要です。バックパックのウェビングベルトやジッパータブ、ほかのスタッフサックの紐に、このループとフックをつないでおくと、どこかに紛れてしまう心配もなくなり、さっと取り出すことが可能になります。持ち運びの時も、ここに手がかけられるので便利です。

ポケッタブルでしまった状態で目につくのが、袋に印刷された商品のイラストと名前。「なんでわざわざ？」と疑問にも思える印刷ですが、じつは、非常に役に立つアイデアです。アウトドアに行く時に使う仕分け用のスタッフサックは、並べて見てみると、どれも非常に似ていることに気が付くはず。それがいくつもあると、どの袋に何が入っているか、混乱することも。そして、フィールドに着いて見てみると、持ってきたはずのものが入っていない、もしくは、思っていたものとは別のものを持ってきてしまった…なんてトラブルにもなりかねません。
そんな失敗を防いでくれるのが、この印刷。名前のみならず、ヒップパックのイラストが印刷されているので、直感的に認識でき、間違いがありません。たかが印刷、されど印刷。そんな細かい部分にまで心が行き届いた、優れた商品です。

「こんなに小さなものなら、ウェアのポケットで事足りるのでは？」そんな疑問も、一度使ってみると愚問に思えるほど、便利で快適な、このヒップパック。小さくて単純な機能のギアにこそ、それを作るアウトドアメーカーの持つ知識の蓄積やノウハウの差が出てくるようです。
数多あるウェストバックの中でも抜きん出て優れた、小さな巨人とも言えるこの商品は、きっとあなたの「大きなポケット」として活躍してくれることでしょう。