創業は1928年。北イタリア・ドロミテ山麓に今でも本社をおき、自然に囲まれた土地で山靴に向き合い、開発・製造を続けている〈LA SPORTIVA〉。これまでも多くの登山家が〈LA SPORTIVA〉のシューズを履き、ヒマラヤをはじめとした難所登山に挑んできた歴史からも、そのブランドに対する信頼性の高さは揺るぎないものがあります。
現在は「マウンテニアリング」「クライミング」「アプローチ」そして「マウンテンランニング」の4つのカテゴリーのシューズを軸としてアウトドアシューズが展開され、それぞれの開発で生まれた素材や技術そしてユーザーの声を掛け合わせながら、新たなイノベーションが日々産み出されています。
今でこそ日本でも、山道を走る「トレイルランニング」がアウトドアアクティビティとして知られるようになりましたが、〈LA SPORTIVA〉はその黎明期から登山の延長線上の「マウンテンランニング」というカテゴリーで山を走るためのシューズを今日まで作り続けてきました。











トレイルランニング黎明期から専用シューズを作り続ける「LA SPORTIVA」の、超長距離向けフラッグシップモデル
※モデル着用カラーはMENS別カラーの「オパール×チリ」になります
今回ご紹介する〈AKASHA(アカシャ) WOMAN〉は、その中でも100km以上の距離を長時間かけて動き続けるために開発されたシューズで、様々なテクノロジーが詰め込まれています。今ではスポルティバのトレイルランニングシューズの中では最も人気のある製品のひとつとなり、発売以来モデルチェンジすることなく、カラーバリエーションを変えながら製造が続けられています。
冒頭でお伝えした通り、スポルティバのシューズは様々なマウンテンスポーツ向けに開発された技術が詰め込まれていて、〈AKASHA WOMAN〉はトレイルランニング用のシューズではありますが、登山靴やアプローチシューズで適用されているテクノロジーがソールやアッパーにも採用されているので、山を走るためだけではなくハイキングやファストパッキングなど、軽快に登山を楽しみたい方々にもオススメのシューズです。
富山湾をスタートして駿河湾まで日本アルプスを縦走する「TJAR(トランスジャパンアルプスレース)」という山岳レースが、2年に一度開催されています。毎回テレビ番組となって放送されているため、このサイトをご覧の方はご存知の方もいらっしゃると思いますが、番組でも絶対王者として毎回主人公の一人として取り上げられている望月将悟選手が、このTJARで履いているのも〈AKASHA〉です。クッション性の良さと足首の安定感の良さから長年愛用していて、その進む速さこそ異次元ではありますが、日本アルプスの岩稜帯から樹林帯、そして林道や舗装路までを一足で対応するために選ばれたシューズとも言えます。
ここからは、各パーツの特徴に触れながら、それらのテクノロジーもご紹介していきたいと思います。
まずは、ソールの解説からはじめたいと思います。ソールと一言で言っても、シューズの構造上は、地面と直接接する「アウトソール」と、人の足裏と接する「インソール」、そしてその中間で足を守るための衝撃吸収のクッションの役割を担う「ミッドソール」に分けられます。
その中でも、特徴のある「アウトソール」と「ミッドソール」について詳しく見ていきましょう。
まずは、アウトソールに関して。スポルティバのトレイルランニングシューズを裏返してソールをよく見ると、何色かの「X」マークが刻印されているかと思います。これは「FRIXIONシステム」と呼ばれていて、それが何色なのかによって、アウトソールに使われているラバーのコンパウンド(=ゴムの素材)の違いを識別することができます。
「FRIXIONシステム」には、シューズの用途によってグリップ性と耐摩耗性のセッティングが異なる5種類のパターンがありますが、現在トレイルランニングシューズに使用されているのは、上図にある「FRIXION® BLUE / FRIXION® RED / FRIXION® WHITE」の3種類です。
〈AKASHA WOMAN〉に使用されているのは、グリップ性(図中:G)と耐摩耗性(図中:HW)のバランスがそれぞれ平均的な数値を示す「FRIXION® RED」で、密度(硬さ)が違う2種類のコンパウンドが使用されているのが特徴です。
コンパウンドの硬さの違いは、ソールの色で見分けることができます。黄色部分が、耐摩耗性に優れたコンパウンド(=相対的に硬い)を使用しています。爪先の内側と踵の外側にレイアウトされていて、着地の際に地面を確実に捉えるための役割を担っています。残りの黒い部分は、より粘性の高いコンパウンド(=相対的に軟らかい)を使用しているので、滑りやすいトレイルの上り下りでもグリップし、力強く蹴り出すことができます。
さらに細かいアウトソールの説明になりますが、せっかくの機会なので「IMPACT BRAKE SYSTEM(インパクトブレーキシステム)」についても触れておきたいと思います。
これは、トレイルランニングシューズに限らず、スポルティバの登山靴やアプローチシューズにも広く共通して採用されているラグの形状と配列パターンです。ラグの接地部分を斜めにカットし、それらを互い違いに配列することによって、登りでの駆動力、下りでのブレーキ、そして着地時の衝撃吸収を物理的に効かせる仕組みです。
※画像カラーは「ブルー×グレー」になります
「IMPACT BRAKE SYSTEM」を採用しているアウトソールと言っても、シューズの種類や用途によって様々なラグ形状や配列があり、ブレーキの強さや衝撃吸収の度合いもそれぞれ異なります。〈AKASHA WOMAN〉の場合は、前足部と後足部で、ラグの矢尻形状の向きが完全に別れていて、前足部は登りでのトラクションを、後足部は下りでのブレーキが効くようにカギ爪がセットされているのが見て取れます。
このようなことも頭に入れて、シューズ購入の際にソールを見て路面との関係性を想像していただくと、山道具としての靴選びが一層楽しくなると思います。
続いて、ミッドソールに関して。〈AKASHA WOMAN〉のミッドソールは、長距離のトレイルランニング向けに開発されただけあり、とにかくクッション性が高いことが特徴です。
〈AKASHA WOMAN〉のソールは、スポルティバの他のトレイルランニングシューズと比べても前足部(FOREFOOT:25mm)、踵(HEEL:31mm)ともに最大級の厚みで、ラインアップの中で最も厚底なシューズであると言えます。
クッション性が高いということは、うまくミッドソールのクッションの芯に体重がかけられれば、衝撃吸収とその反発力を活かして少ない力で前に進むことができます。ランニングのように強度が高い運動では、その効果が高く発揮されますが、登山やハイキングでも原理は同じなので、このソールを使い熟せば、これまでよりも早く楽に目的地に辿り着くことができると思います。
ただし、そのソールのクッション性を引き出すには、着地の際の横ブレを最小化する必要があります。タイヤの空気が抜けた自転車を漕いでも重くてなかなか前に進まないのと同じで、横ブレは前に進もうとする推進力のためのエネルギーを奪ってしまうからです。
そこで、この〈AKASHA WOMAN〉に取り入れられているのが、「STBコントロールシステム」と呼ばれているアッパーとソールをつなぐ仕組みです。
アッパーからミッドソールの土踏まずまでをひとつのパーツで巻き込み、両サイドにはブレを軽減するプラスティックプレート(上写真の後足部の黄色のミッドソールの中に樹脂製のプレートが一部露出しています)をはめ込むことで、重量をさほど増やさずにフィット感と安定感の双方を向上させる仕組みです。シューズ外観には表れない機構ですが、不安定な路面コンディションでも左右の倒れ込みをしっかりと抑えてくれています。
最後にアッパーに関して何点か特徴をご紹介します。シューズを購入する際にまず気になるのが足の幅や甲の高さかと思いますが、〈AKASHA WOMAN〉に関しては、スポルティバに限らず日本で売られているトレイルランニングシューズの中でも、幅が広く甲も高い部類と言って間違いないかと思います。
長距離・長時間のトレイルランニングにおいては、その間に足先も浮腫んで来るため、それも見越した設定でシューズの設計が行われています。そのため、特に前足部にゆとりが必要な指周りや甲の部分は伸縮性があるメッシュで作られていて、足先のボリューム変化に追従できるようになっています。
ただし、トレイル上の障害物に擦れて損傷する可能性のある部位には樹脂パーツで補強を加えています。特に爪先はTPU素材で覆い、トレイルランニングにおけるスピードを想定した衝撃吸収性と耐摩耗性を確保しています。
また足の甲部分は、先ほどの「STBコントロールシステム」を効かせるために、側面から回り込む素材は保持力の高い素材を使っていて伸縮度合が落ちるので、その代わりに伸縮割合がかなり高いシューレースを採用し、その伸び代を使って足のボリューム変化に追従する設計になっています。
足入れ部周辺に関しては、クッション入りメッシュで覆われていて、その肉厚も踵周辺は特に厚くなっています。シューレースを締めると、踵の出っ張りがクッションに引っかかって抜けないようにするためで、足入れした瞬間にその感触は感じることができると思います。
ただし、その肉厚メッシュの快適性とのトレードオフで、雨や渡渉などでシューズが濡れると水分を含んでしまい、薄いアッパーのシューズと比べて重く感じてしまうかもしれません。水分を含まない状態でも、シューズの重量は片足330g(サイズ42)と、昨今の軽量化が進んだトレイルランニングシューズ群の中では、決して軽い部類ではないですが、ソールやアッパーのクッション性と堅牢性を兼ね揃えたこの仕様を考えた上で、その辺りは総合的に判断すべきかと思います。
長距離のトレイルランニングや登山、ハイキングなど、1分1秒を争うアクティビティではない場面で使う道具であると考えれば自ずとその回答は出ると思いますが、スポルティバのトレイルランニングカテゴリーの中で、多用途に使うことを前提としたシューズをお探しでしたら、〈AKASHA WOMAN〉は一足持っていて決して損はないシューズと言い切れるでしょう。
〈AKASHA WOMAN〉を構成する主な機能紹介は以上となります。外観はシンプルなトレイルランニングシューズですが、詳しく紐解いていくと、これまで登山靴を作り続けてきた〈LA SPORTIVA〉のシューズ設計のテクノロジーが詰め込まれた製品であることが、お分かり頂けたかと思います。
今でこそ多くのメーカーが様々なスタイルのアウトドアシューズを製造・販売する時代になりましたが、90年以上前から北イタリアの山岳地帯で登山靴に向きあい、現在でも常に高度な技術で新しいプロダクトを提供してくれている孤高のアウトドアシューズブランド〈LA SPORTIVA〉。
世界的ブランドになった今でも、ドロミテの山麓にある山間の小さな町に本社工場や開発センターを置き、様々なアウトドアアクティビティのフィールド、そして登山家やアスリートをはじめとするユーザーに寄り添ったモノづくりが行われています。
そのような環境から生まれる〈LA SPORTIVA〉の伝統と革新を足裏で感じながら、これまで以上に快適で躍動的な山旅を楽しんでいただければと思います。
スポルティバ(LA SPORTIVA)/ WOMENS
EU | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 |
cm |
23.1 |
23.7 |
24.3 |
24.9 |
25.5 |
※cm表記は実寸です。個人の足型や好み、モデルによっても変化する場合がございます。
商品詳細
ブランド |
スポルティバ(LA SPORTIVA) |
名称 |
アカシャ/WOMENS |
アッパー |
エアメッシュ+PU レザー+ダイナミックプロテクション |
ライニング |
ノンスリップメッシュ |
ソール |
FriXion Red + トレイルロッカーシステム |
重さ(1/2ペア) |
約280g |
カラー |
ミネラル インク(ブルー×シルバー) |
特徴 |
衝撃吸収性に優れ、幅広な足形の採用により、ロングトレイルや長距離トレーニングなど長時間の使用に向いています。アッパーには足の動きに追従する柔軟性を持ちながら形状を維持する「ダイナミックプロテクションシステム」を採用。インソールには悪路の衝撃から足を守る「クッションプラットフォーム」と、新システムを惜しみなく盛り込みました。 |